近年、WEBマーケティングはビジネスにおいて欠かせない要素となっています。
しかし、「WEBマーケティング」という言葉は知っていても、その全体像や具体的な手法、成功させるためのポイントを理解している人は少ないかもしれません。
この記事では、これからWEBマーケティングを始める方に向けて、基本的な考え方から実践的なノウハウ、成功させるための秘訣までを網羅的に解説します。
WEBマーケティングとは
WEBマーケティングとは、インターネット上のWEBサイトやSNS、広告などを活用して商品・サービスの認知拡大や売上向上を図るマーケティング手法のことです。
そもそも「マーケティング」とは
そもそも「マーケティング」とは、企業が顧客のニーズに応えるものを創造し、その結果として売上を上げるための活動全般を指します。
日本マーケティング協会のマーケティングでは、以下のように定義づけています。
(マーケティングとは)顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。
(2025年8月現在)
したがって、マーケティングとはセールス、販売活動、プロモーションだけを指すのではなく、ニーズ(課題)を汲み取ってそのソリューションを提供するまでを指します。
✕ セールスやプロモーション
◯ 顧客のニーズ(課題)に応える活動全般
そして、自社が売りたいものを売るという「プロダクトアウト」の発想ではなく、あくまでも顧客(市場)のニーズに対応するという「マーケットイン」の発想であることが、「マーケティング」の概念に組み込まれています。
そのため、「マーケティング活動」は、市場調査や既存顧客のニーズ調査から始まり、ターゲットの選定、商品開発、プロモーション、販売、そして顧客との関係構築に至る流れを「全てやる」必要があるのです。
WEBマーケティングとは何か
WEBマーケティングとは、前述の「マーケティング活動」を、主にインターネット上で行うものです。
ウェブサイトやSNS、メール、動画など、さまざまなオンラインチャネルを活用して、商品やサービスの認知度向上、見込み客の獲得、売上向上を目指します。
初めはセールスやプロモーションのフェイズから入りますが、オンラインチャネルではデータを把握することができます。
WEBマーケティングは、その顧客の行動や反応をデータで詳細に分析できるため、施策の効果を可視化し、PDCAサイクルを迅速に回せる点が最大の特徴です。
WEBマーケティング/デジタルマーケティング/DX の違い
WEBマーケティング、デジタルマーケティング、DXは、いずれも「デジタル」という共通点を持つため混同されがちですが、それぞれ指し示す範囲や目的が異なります。
WEBマーケティングとは
WEBマーケティングは、WebサイトやWebサービスを軸に行うマーケティング活動です。
Webマーケティングの目的は、自社のWebサイトへユーザーを集め、そこでの行動を分析し、最終的に商品の購入や問い合わせといった成果につなげることです。
具体的な手法としては、GoogleやYahoo!などの検索エンジンから見込み客を呼び込むためのSEO(検索エンジン最適化)、検索結果の上部やSNSに広告を表示させるリスティング広告やSNS広告、ブログ記事などで情報を提供するコンテンツマーケティングなどが挙げられます。
つまり、Webマーケティングは、あくまでオンライン上の「Web」という特定の場所に焦点を当てた活動と言えます。
デジタルマーケティングとは
デジタルマーケティングは、WEBマーケティングよりも広い概念です。
Webサイトだけでなく、メール、アプリ、IoT機器など、あらゆるデジタルチャネルやデバイスを横断して、顧客との接点を増やし、データを活用してコミュニケーションを最適化する活動全般を指します。
例えば、Webサイトでの行動履歴を元にメールで最適な商品を提案したり、スマートフォンの位置情報データを活用して実店舗にいる顧客にクーポンを配信したりすることもデジタルマーケティングに含まれます。
デジタルマーケティングの目的は、オンライン・オフラインの垣根を越えて顧客の行動を統合的に把握し、一貫した体験を提供することで、顧客との関係性を深め、生涯にわたる価値(LTV)を高めることです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
最後に、DX(デジタルトランスフォーメーション)は、マーケティング部門に限定されるものではなく、企業全体の変革を意味します。
これは単にデジタルツールを導入することではなく、デジタル技術を活用して、ビジネスモデルや業務プロセス、組織の文化そのものを根本から変革し、市場での競争優位性を確立することを目指します。
例えば、顧客データを一元管理し、商品開発や営業活動に活かしたり、AIを活用して生産や物流の効率を最大化したりといった取り組みがこれにあたります。
DXは、デジタルマーケティングで得られた顧客の知見を全社的に共有し、新しい価値を生み出すための重要なプロセスと言えます。
WEBマーケティング
デジタルマーケティング
DX(デジタルトランスフォーメーション)
対象範囲
WebサイトやWebサービスを軸にした活動に限定
Webサイト、メール、アプリ、SNS、IoTなど、あらゆるデジタルチャネル
企業全体のビジネスモデル、業務プロセス、組織文化、企業風土など
目的
Webサイトを起点とした集客、見込み客獲得、コンバージョン改善
デジタルデータを活用したLTV向上、一貫した顧客体験の提供
デジタル技術による企業全体の変革、競争優位性の確立
主な施策
・SEO/SEM
・リスティング広告
・WebサイトUI/UX改善
・コンテンツマーケティング
・Webマーケティングの施策すべて
・メールマーケティング
・アプリのプッシュ通知
・MA/CRMツールの活用
・顧客データ分析
・業務プロセスの自動化
・AIによる需要予測
・新たなサービスやビジネスモデルの構築
・組織間のデータ連携
関連性
デジタルマーケティングの一部であり、Webチャネルに特化した手法
DXを推進するための重要な手段であり、マーケティング部門における変革
企業全体でデジタルを活用し、ビジネスを根本から変革する上位概念
一言で表すと
「Webサイトを軸にどう集客するか?」
「デジタルを活かしてどう顧客と向き合うか?」
「デジタルで会社全体をどう変革するか?」
WEBマーケティング施策の背景にある概念
WEBマーケティングは、前述のようにウェブサイトなどのオンラインチャネルを通じて自社のホームページに集客し、顧客のニーズを把握してそのソリューションを提供していくものですが、顧客の動きや自社商材に対する関心度はさまざまで複雑です。
最終的には売上を増やす施策を行う必要があるため、いかに質の高い顧客を集め、高い関心を持ってもらうかが成否を分けます。
そのため、そういった複雑なものを単純化して可視化するモデルがいくつかあります。
ここでは、WEBマーケティングを行うに当たって、最低限知っておくべきモデルをご紹介しましょう。
カスタマージャーニー
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを認知し、興味を持ち、比較検討し、最終的に購入に至るまでの一連のプロセスを旅に見立てた概念です。
このカスタマージャーニーを理解することで、顧客がどの段階でどのような情報を求めているのか、どのチャネルで接触するのが効果的かなどを把握できます。
顧客の行動を時系列で可視化することで、より効果的なWEBマーケティング施策を立案することが可能になります。
一方、可視化するだけでなく、どのタッチポイントで何が求められるのかをしっかりと認識し対策を行う必要があります。
特に、顕在層だけをターゲットにしていても売上が頭打ちになるため、潜在層をいかに顕在層へ引き上げ、自社の顧客にしていくかという設計が重要です。
実際、当社がコンサルティングをしている売上拡大を実現しているマーケティング施策では、SEO対策のコンテンツ記事制作、広告運用、WEBサイトの改善作業において、このプロセスを具現化して成功することができています。
WEBマーケティングファネル
WEBマーケティングファネルとは、顧客が商品やサービスを認知してから購入に至るまでのプロセスを、漏斗(ファネル)の形に例えて示したものです。
カスタマージャーニーとステップは似ていますが、カスタマージャーニーは「ユーザー(顧客)の行動」であるのに対し、マーケティングファネルは「自社商材への関心の高まりと層のボリューム」を把握するモデルです。
ファネルの最上部は「認知」で、潜在的な顧客層が最も多く存在します。
次に「興味・関心」「比較・検討」と進むにつれて数が絞り込まれ、最終的に「購入」に至ります。
このファネルの各段階において、適切なマーケティング施策を講じることで、効率的に顧客を獲得できます。
WEBマーケティングの種類と運用方法
WEBマーケティングの施策は目的や役割によってさまざまな種類があります。
契約・購入に至るまでに大きく「集客フェイズ」「説得フェイズ」「接客フェイズ」「分析・改善フェイズ」の3つに分けられ、それぞれの段階で適切な運用を行うことが成果につながります。
集客フェイズ
集客フェイズは、潜在的な顧客を自社のウェブサイトやSNSなどのチャネルに呼び込むための活動です。
この段階で、ターゲットとなる顧客層に自社の存在を認知させ、興味を持ってもらうことが目的です。
ウェブサイトへの流入数を増やすことで、次のフェイズである「接客・説得」につなげることができます。
SEO(検索エンジン最適化)
SEO(検索エンジン最適化)は、GoogleやYahoo!などの検索エンジンの検索結果で、自社のウェブサイトをより上位に表示させるための施策です。
キーワードの選定、質の高いコンテンツの作成、内部リンク構造の最適化、外部サイトからの被リンク獲得など、多岐にわたる取り組みが含まれます。
SEOは即効性はないものの、継続することで中長期的に安定した集客効果が期待できます。
SEO対策は、ECサイトなどの「データベース型のSEO対策」と、コーポレートサイトやブランドサイトの「オウンドメディアのSEO対策」に分かれます。
ECサイトは、商品データベースの最適化(例:商品名、カテゴリ、サイト内リンク、レビュー等の構造)を主に行って「Buyクエリ」で対策します。
コーポレートサイトやブランドサイトは、「コンテンツ」の力でユーザーの信頼や共感を獲得することに焦点を当て、「Knowクエリ」「Doクエリ」で対策を行うことが多くなります。
以下で、上述のマーケティングファネルの各段階別に、コーポレートサイトやブランドサイトでどのようなSEO対策が必要になるのかを見ていきましょう。
認知段階:まだ「あなた」を知らないユーザーへのアプローチ
この段階にいるユーザーは、まだあなたの会社やブランドの存在を知りません。
彼らが検索するのは、「肌荒れの原因」や「在宅ワークで集中する方法」といった、漠然とした悩みや課題です。
ここでやるべきSEO対策は、潜在的なニーズを持つユーザーに寄り添うこと。具体的な対策として、ブログやコラム記事で、ユーザーの課題解決に役立つ情報を深く掘り下げて提供します。
キーワードとしては、「〇〇 選び方」や「〇〇 解決方法」など、情報収集型のキーワードを狙います。
いきなり商品を売り込むのではなく、「困っているあなたに、こんな解決策がありますよ」とヒントを示す姿勢がポイントです。
そしてユーザーに「この記事を読んだら悩みが解決した」と思ってもらい、自社のサービスページへ誘導することが重要です。
興味・関心段階:あなたの「価値」を伝える
あなたの存在を認知し、少し興味を持ったユーザーは、より具体的な情報を探し始めます。
彼らは、「転職エージェント おすすめ」や「高級チェア 比較」といった、選択肢を絞り込むためのキーワードで検索します。
この段階の目標は、他社にはないあなたの強みを明確に示し、興味をさらに深めてもらうことです。
そのためには、競合他社と比較した記事を作成し、自社商品やサービスの優位性を客観的に示します。
また、実際にサービスを利用したユーザーの生の声や成功事例を掲載することで、共感を呼び起こします。
「なぜ他社ではなく、私を選ぶべきなのか?」というユーザーの問いに、明確に答えるコンテンツを用意することが求められます。
比較記事の作成が難しい場合、優位性の訴求を抑えめにして、別のページで説得していくことになります。
比較・検討段階:最後の「ひと押し」で後悔させない
この段階のユーザーは、購入をほぼ決意しており、最後の確認作業をしています。
彼らが検索するのは、「〇〇(商品名) 口コミ」や「〇〇(ブランド名) 料金」といった、購買意欲が極めて高いキーワードです。
ここでは、ユーザーの不安を徹底的に取り除き、購入を後押しするページを準備することが大切です。
商品やサービスの魅力、購入メリット、よくある質問、カスタマーサポート情報などをすべて集約したランディングページを作成し、コンバージョン率を高めます。
また、明確なCTA(Call to Action)ボタンを設置することも重要です。
購入後:ファンになってもらうための「継続」
購入はゴールではなく、始まりです。
この段階の顧客は、リピーターやブランドの「ファン」になる可能性があります。
彼らは、「〇〇(商品名) 使い方」や「〇〇(サービス名) 活用方法」など、利用後の疑問やさらなる価値を求めて検索します。
ここでやるべきことは、顧客との関係を維持し、ブランドへの愛着を育むことです。
具体的には、商品を使いこなすためのガイド記事や、トラブル解決のためのFAQを充実させ、顧客が再びサイトを訪れる理由を作ります。
「このブランドは、購入後も私たちを大切にしてくれる」という体験を提供することで、顧客のロイヤルティが高まります。
その結果、顧客は自然とSNSなどでブランドについて発信してくれるようになり、それが新たな顧客の獲得という、SEOの好循環を生み出していきます。
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WEB広告
WEB広告は、インターネット上のさまざまな媒体に出稿する広告の総称です。
検索結果に表示されるリスティング広告、ウェブサイトの広告枠に表示されるディスプレイ広告、SNS上で配信されるSNS広告、動画の冒頭や途中に表示される動画広告など、様々な種類があります。
WEB広告は、短期間で集客効果を出しやすいのが特徴で、ターゲットを細かく設定して効率的にアプローチできます。
ただし、広告は商材の特徴別に運用方法が全く異なるため、注意が必要です。
例えば、単価が高く、検討期間が数ヶ月から数年という商材に対し、検索広告を大量に配信しても費用対効果は悪くなります。
そのため、以下で商材の特徴別にどのような運用方法になるのか、方向性を見ていきましょう。
高額商材の広告運用
高額商材の広告運用では、短期的な購入を促すのではなく、顧客との信頼関係を築くことに重点を置きます。
顧客の検討期間が長いため、広告は「すぐに買ってください」という直接的なメッセージよりも、「この分野の専門家は私たちです」と示す情報提供型が効果的です。
業界レポートや導入事例をまとめた資料のダウンロードを促したり、無料相談会の告知をしたりするなど、顧客との接点を複数回にわたって持ち、購買意欲を徐々に高めていきます。
主な広告媒体は、顧客の課題を深く掘り下げる記事広告や、専門的な情報を発信できるSNS広告(Instagram/Fecebookなど)が適しています。
低額商材の広告運用
低額商材の運用は、いかに多くの人に商品を認知させ、購入までの流れをスムーズにするかが鍵となります。
顧客は衝動的に購入を決めることが多いため、広告は視覚的な魅力を強調し、直感的に「欲しい」と思わせることが重要です。
SNS広告やYouTube広告で商品の魅力的な画像や動画を配信し、幅広い層にリーチします。
また、一度サイトを訪れたものの購入に至らなかったユーザーに対しては、短い期間で設定したリストに対するリターゲティング広告で再アプローチをかけ、購買意欲が冷めないうちに購入を促します。
中長期検討商材の広告運用
中長期検討商材は、リード(見込み客)の獲得と育成が主な運用目的となります。
購入に至るまでに顧客との継続的なコミュニケーションが必要なため、単発の広告ではなく、段階的に内容を変えて配信するナーチャリングの考え方を取り入れます。
例えば、最初は業界のトレンドを解説する記事広告で関心を惹きつけ、次にサービスの詳細な資料請求を促す広告を配信し、最終的に無料トライアルやデモへの申し込みを促します。
このように、顧客の興味関心の度合いに合わせて広告の内容を調整することで、効率的に購買プロセスを進めることができます。
主な広告媒体は、検索広告以外のディスプレイ系の広告やSNS広告がメインになり、検索広告を行うとしてもクリック単価をかなり抑えて運用することになります。
短期検討商材の広告運用
短期検討商材は、ユーザーの購買意欲が高まった瞬間を逃さないことが最も重要です。
セールやイベント、旅行など、購入のタイミングが限定されているため、広告は緊急性や希少性を訴えるメッセージを強く打ち出します。
「本日限り」「残り〇席」といったコピーや、カウントダウン機能付きの広告が有効です。
ユーザーが直接商品名やサービス名を検索する段階で確実にアプローチできるよう、検索広告を主軸に運用します。
また、サイトを訪れたユーザーに対しては、迷っている間に購入を逃さないよう、短い期間で設定したリストに対するリターゲティング広告で迅速に再アプローチをかけます。
SNSマーケティング
SNSマーケティングは、Instagram、X(旧Twitter)、TikTok、Facebookなどのソーシャルメディアを活用した集客施策です。
自社の公式アカウントを運用し、フォロワーとのコミュニケーションを図ったり、情報発信を行ったりします。
SNSマーケティングは、ユーザーとの距離が近く、共感を呼ぶコンテンツが拡散されやすいのが特徴です。
UGC(ユーザー生成コンテンツ)を促すことで、さらなる認知拡大も期待できます。
SNS運用についても、以下で商材の特徴別にどのような運用方法になるのか、方向性を見ていきましょう。
高額商材:信頼と専門性を築く「情報提供型」運用
不動産や高級車、BtoBサービスといった高額商材は、顧客が即決することはまずありません。
高額な買い物や投資には、信頼と納得できる理由が不可欠です。
そのため、SNS運用では、直接的な販売を目的とせず、情報提供と専門性の提示に徹します。
たとえば、YouTubeで業界の最新トレンドを解説したり、LinkedInで専門家によるコラムを発信したりして、「この分野なら、この企業に相談したい」と思ってもらうことが目標です。
経営者や開発者のパーソナルな想いを伝えることで、ブランドの哲学に共感してもらい、ファンを育てることも重要です。
SNS広告も、資料ダウンロードや無料相談会への誘導を目的にし、顧客との関係を時間をかけて築くことに注力します。
低額商材:視覚と勢いで購買意欲を刺激する「エンタメ型」運用
日用品や食品、アパレルといった低額商材は、顧客が気軽に購入できるため、直感的な魅力と話題性が大きな武器となります。
SNS運用では、商品の機能を理路整然と語るよりも、ユーザーの感性に訴えかけるクリエイティブを重視します。InstagramやTikTokで目を引く写真やテンポの良い動画を投稿し、「この商品、なんだか気になる」と思わせることが大切です。
また、ユーザー参加型のハッシュタグキャンペーンなどを企画すれば、顧客が自ら発信してくれる「UGC(ユーザー生成コンテンツ)」が生まれ、それが新たな顧客を呼び込む強力な口コミとなります。
さらに、「今だけ」「数量限定」といったお得情報をタイムリーに発信することで、購買意欲を刺激します。
中長期検討商材:関係性を築き、時間をかけて育てる「育成型」運用
住宅や保険、SaaS(ソフトウェア)といった中長期検討商材は、情報収集から購入までが長期間にわたります。
SNSは、単なる広告の場ではなく、見込み客(リード)を育成するためのツールとなります。
運用の鍵は、顧客の検討フェーズに合わせて、段階的にコンテンツを配信することです。
最初期には「家選びのポイント」のような一般的な情報で関心を惹きつけ、徐々に「住宅ローンの選び方」といった具体的な情報、最終的に「無料相談会」の告知へと繋げていきます。
また、ライブ配信でのQ&Aセッションや、クローズドなコミュニティを運営することで、顧客の疑問や不安に寄り添い、信頼関係を深めます。
このように、時間をかけて顧客をフォローし、購買へと導きます。
短期検討商材:即時性と利便性で逃さない「瞬発型」運用
イベントチケットや期間限定のセール品、旅行商品といった短期検討商材は、ユーザーの「今すぐ欲しい」という気持ちを逃さないことが最も重要です。
SNS運用では、緊急性や希少性を強く打ち出すメッセージが効果的です。
「残りわずか」「明日まで!」といったコピーや、カウントダウン機能付きの投稿で、ユーザーの行動を促します。
また、イベントの熱気や旅行先の美しい風景など、商品の魅力を最大限に引き出すクリエイティブで感情に訴えかけます。
投稿からECサイトや予約ページに直接遷移できるようにし、購入までの手間を最小限に抑えることも不可欠です。
ユーザーの購買意欲が最高潮に達した瞬間に、スムーズに購入を完了させるための仕組みをSNS上に構築します。
動画マーケティング
動画マーケティングは、動画コンテンツを制作し、YouTubeやTikTok、SNSなどで配信するマーケティング手法です。
商品やサービスの使い方を解説したり、ブランドの世界観を伝えたり、顧客の体験談を紹介したりと、視覚と聴覚に訴えかけることで、より深くユーザーの心に響くコンテンツを作成できます。
動画は情報量が多く、視聴者の記憶に残りやすいという強みがあります。
運用方法については、上述のSNSと同じ方向性になるでしょう。
コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングは、ターゲットユーザーにとって価値のあるコンテンツを継続的に提供することで、見込み客を育成し、最終的な顧客へと転換させるマーケティング手法です。
ブログ記事、ホワイトペーパー、eBook、ウェビナーなど、様々な形式で情報発信を行います。
コンテンツマーケティングは、顧客との信頼関係を築き、中長期的な関係構築に貢献します。
SEO対策としてコンテンツマーケティングを行う場合は、上述のSEO対策と同じ運用方法になります。
メール
メールは、見込み客や既存顧客に対して、メールを送信するマーケティング手法です。
メルマガ(メールマガジン)やステップメールなどが代表的です。
セグメント(特定の条件でグループ分けすること)された顧客に対して、パーソナライズされた情報を届けることで、エンゲージメントを高め、購買意欲を向上させることができます。
メールは、顧客との直接的なコミュニケーション手段として有効です。
特に、中長期検討商材、高額商材で、購入に至る前にホワイトペーパーなどの資料をダウンロードしたユーザーに対しては、メールによる情報提供や購入を促すナーチャリングの施策が重要になります。
説得フェイズ
説得フェイズは、集客フェイズで獲得した見込み客を、ウェブサイト内で最終的な購入や問い合わせへと導くための活動です。
ユーザーがスムーズに目的を達成できるよう、サイトの使いやすさを改善したり、商品やサービスの魅力を効果的に伝えたりすることが重要になります。
ホームページ改善
ホームページ改善は、ウェブサイトのユーザビリティやデザイン、コンテンツを見直し、より効果的なものに作り変えることです。
ページの読み込み速度を最適化したり、ナビゲーションを分かりやすくしたり、モバイル対応を進めたりすることで、ユーザーの離脱を防ぎ、滞在時間を延ばすことができます。
ホームページも、マーケティングファネルのユーザー動向に対応した内容があるべきです。
そのため、ファネルに応じてどのような内容が求められるのかを見ていきましょう。
認知:見込み客との最初の出会いを大切にする
ブランドや商品の存在をまだ知らないユーザーは、特定の企業名ではなく、彼らが抱える悩みや課題を解決するために検索します。
この段階のホームページの役割は、「あなたの課題に寄り添う情報源」として見つけてもらうことです。
そのため、ホームページには、あなたのビジネスが扱うテーマに関する「ブログ」や「コラム」といったコンテンツが不可欠です。
SEO(検索エンジン最適化)を意識した質の高い記事を通じて、ユーザーの疑問を解決する情報を提供することで、自然な形でサイトへの流入を促します。
読みやすさを追求したデザイン、そしてユーザーの共感を呼ぶようなストーリー性のあるコンテンツで、最初の出会いを印象的なものにしましょう。
興味・関心:あなたの「価値」を深く理解してもらう
認知段階でサイトを訪れたユーザーは、あなたのビジネスに何らかの興味を持ち始めています。
この段階では、その関心をさらに深め、信頼を勝ち取ることが重要です。
ホームページは、あなたのサービスや商品がユーザーの課題をどのように解決するのかを具体的に示す場所であるべきです。
「導入事例」「お客様の声」「よくある質問(FAQ)」などのページを充実させ、「自分もこのサービスで課題を解決できそうだ」とユーザーに感じてもらいましょう。
そして、興味を持ったユーザーの行動を促すために、「ホワイトペーパーのダウンロード」や「メルマガ登録」といったCTA(行動喚起)ボタンを分かりやすい場所に配置しておくことが鍵となります。
比較・検討:購入という決断を後押しする
購入を具体的に検討しているユーザーは、競合との比較をしています。
ホームページは、ユーザーの最終的な決断を後押しするための説得力ある情報を提供する役割を担います。
この段階では、他社にはないあなたの独自の強み(USP/突出性)を強調したページが必要です。
価格表や料金プラン、他社との機能比較表など、ユーザーが意思決定に必要な情報を一覧できるようなコンテンツを設けましょう。
さらに、受賞歴やメディア掲載実績といった客観的な信頼性を示す情報も掲載します。
そして、ユーザーが迷いなく購入まで進めるよう、決済までのプロセスをスムーズにするための入力フォーム最適化も不可欠です。
購入後:ファンを育てる「コミュニティ」の場に
購入はゴールではなく、長期的な関係の始まりです。
ホームページは、顧客とのエンゲージメントを維持し、リピーターや熱心なファンを育てるための場としても機能します。
購入者向けの「会員サイト」や「使い方ガイド」、そして顧客同士が交流できる「Q&Aコミュニティ」など、購入後も顧客がサイトを訪れる理由をつくりましょう。
また、顧客の声を取り入れてサービスを改善していく姿勢を示すことで、顧客は「このブランドは自分たちを大切にしてくれる」と感じ、愛着を深めていきます。
そうして生まれた熱心なファンが、自らブランドの良さを広めてくれる存在へと変わっていくのです。
LP制作・最適化
LP制作・最適化は、ランディングページ(LP)を制作し、その効果を最大化するための施策です。
LPは、特定の目的(商品購入、資料請求など)に特化したウェブページであり、訪問者に迷わせることなく目的の行動を促すためのものです。
短期検討商材の場合は、商材のメリットを伝えて、今ならこんなにお得ですというように一気に説得し問合せ・購入に繋げます。
一方、中長期検討商材の場合は、LPを一度見ただけでは説得し得ないので、商材のメリットを網羅的に伝えたあとに、事例ページやお客様の声ページに誘導するなどの工夫が必要です。
キャッチコピーのA/Bテストや、CTA(Call To Action:行動喚起)ボタンの配置、フォーム項目の最適化など、様々な改善を繰り返して効果を高めます。
接客フェイズ
接客フェイズは、問合せを獲得したあとに、商談を行って契約に結びつけるための活動です。
まずは、集客フェイズ、説得フェイズと一貫性を保つ必要があります。
そして、WEBマーケティングが浸透している現在、多くの消費者はここに至る前のホームページによる情報収集である程度絞った上で商談に臨んでいます。
したがって、失点しないこと、ホームページ等の情報よりも心が動かされることが求められます。
分析・改善フェイズ
分析・改善フェイズは、これまでのマーケティング活動の成果を客観的に評価し、次の施策に活かすための活動です。
データに基づいた意思決定を行うことで、無駄なコストを削減し、より効率的に目標を達成できるようになります。
データ化
データ化は、ウェブサイトへのアクセス数、ユーザーの行動、コンバージョン率など、様々な指標を数値として把握することです。
Google Analyticsなどのツールを活用して、サイトに訪れたユーザーがどこから来たのか、どのページを閲覧したのか、どのくらいの時間滞在したのかといった情報を収集します。
データ化することで、感覚に頼らない客観的な分析が可能になります。
多彩なディメンションによる解析
多彩なディメンションによる解析とは、単なる数値の増減だけでなく、様々な切り口(ディメンション)からデータを深掘りすることです。
例えば、ユーザーの年齢、性別、地域、使用デバイス、流入元、商品別、購入時間別、OS別など、複数の軸を組み合わせて分析することで、より精度の高いユーザー像や行動パターンを把握できます。
これにより、特定のターゲットに合わせた施策を考案することができます。
次なる方向性を示す
分析結果を基に、次にどのような施策を打つべきかを明確にすることが必要です。
PDCAのCからAに当たる部分で、データが示す課題を特定し、その課題を解決するための具体的なアクションプランを策定します。
例えば、特定のページでの離脱率が高い場合、そのページの内容を改善したり、ナビゲーションを見直したりといった改善策を導き出すことができます。
WEBマーケティングを成功させる方法
WEBマーケティングで成果を出すためには、個別のテクニックだけでなく全体戦略の設計と継続的な改善、そして長期的なブランド構築を視野に入れることが重要です。
広告運用の設定、テクニカルなSEO対策、ホームページを作り直すなどの作業は、あくまでも下流工程の作業になります。
上流工程がすっかり抜けたままWEBマーケティング戦略を進めている場合、投入コストに対するリターンが得られてないでしょう。
WEBマーケティングを成功させるには、ここで示すような理論をベースにした戦略全体のグランドデザインが必要です。
マーケティングの最終的な目的はブランディング
マーケティングの最終的な目的は、単に商品やサービスを売ることだけでなく、顧客に愛され、選ばれ続けるためのブランドを構築することです。
逆の表現では、マーケティングはブランディングというゴールを達成するための重要な手段の一つであり、その最終的な目的は、単に商品やサービスを売るだけでなく、顧客の心の中に「ブランドの価値を確立すること」にあります。
企業が短期的な売上を上げるだけでは、競合との価格競争に巻き込まれ、疲弊してしまいます。
しかし、強力なブランドを築くことができれば、顧客は「〇〇だから買う」という理由で商品を選び、価格競争から抜け出すことが可能になります。
したがって、将来的なブランド確立を実現し得ないマーケティング施策は、何年もかけて人、モノ、金などのリソースを無駄にすることになります。
WEBマーケティングを行うに当たって、とりあえず一般的な情報を元にSEO対策を始めたり、広告を始めたりして、数カ月後、数年後に「私たちはどこに向かっているのか」という疑念を抱く会社は非常に多いです。
SEOや広告を専門の会社に委託していたとしても、同様の結果になることは少なくありません。
WEBマーケティングを始めて数年後には、その業界である程度のブランドを確立していることが目的になるので、ブランド確立のために何が必要なのか?という視点から逆算して施策を考える必要があります。
いわゆる「バックキャスティング」の思考法で、各種マーケティング施策を検討していくことになるのです。
「バックキャスティング」には、外部のノウハウを活用したり、外部環境分析をしっかり行ってこれまでにない変革的な目標、KPIを設定することが求められます。
したがって、現状より強いブランド構築を目指すのであれば、後述しますが3C分析などの外部環境分析を行った上で、差別化していくことが鍵になり、マーケティング施策はそれを実現させる手段として実行する必要があるのです。
ブランディングの第一段階
ブランディングとは、企業や商品、サービスが顧客の心の中に築き上げる、独自のイメージや価値観のことです。
単なるロゴやデザインだけでなく、提供するサービスの内容、顧客対応、発信するメッセージなど、あらゆる要素がブランディングを形成します。
ある商品カテゴリーの名前が「△△△△」だとしたら、顧客が「△△△△といえばこの会社」と想起するような、唯一無二の存在になることを目指します。
SEO対策、WEB広告、SNS、ホームページ戦略のすべてが、「△△△△といえばこの会社」と想起するブランドを構築できるよう、手を打っていかなければなりません。
SEO対策では、その「△△△△」で検索したときに上位化し、広告やSNSでは「△△△△」というバナーを何度も視認させ、ホームページでも「△△△△」が目立つように記載されている状態にする必要があります。
そして、商材自体も機能やイメージの面で認められ、実際に売れる状態になり、売上を増やしていくことがブランディングの第一段階の目的です。
ブランディングの第二段階
ブランディングの第二段階は中長期的な観点であり、第一段階の状態を継続することによって「指名買い」の数を増やし、長期的な顧客との信頼関係を構築し、企業としての価値を高めていくことです。
ブランディングが成功すれば、価格競争に巻き込まれにくくなり、長期的な顧客ロイヤリティを獲得できます。
また、商品名、ブランド名、自社名で検索される回数が増えることにより、マーケティングコストを抑えることができます。
WEB上でのマーケティングの戦いが熾烈になっている中で、以前のように「SEOで上位化する」「検索広告をガンガン回す」だけでは売上が上がらなくなっています。
ブランドの認知を高め、その価値を認めてもらい、ユーザー自らホームページやSNSのアカウントを訪れてくれる状態にもっていくことが、WEBマーケティングで勝ち残るポイントになります。
経営戦略の策定プロセス
経営戦略の策定プロセスは、企業が長期的な目標を達成するための羅針盤となるもので、WEBマーケティングもこの経営戦略の中の一つの施策であるため、まずはこのフローを理解する必要があります。
まず最上部は、そもそもの経営理念や中長期的なビジョンのもとに、一つの戦略がスタートします。
次に、外部環境(市場、競合など)と内部環境(自社の強み、弱みなど)を分析し、自社の立ち位置を明確にします。
分析方法は、例えばPEST分析、3C分析、SWOT分析などがあります。
PEST分析: 政治、経済、社会、技術の4つのマクロ環境が事業に与える影響を分析するフレームワーク。
3C分析: 顧客、競合、自社の3つの視点から、事業成功の要因を分析するフレームワーク。
SWOT分析: 自社の強みと弱み、そして外部の機会と脅威を整理・分析し、戦略を策定するフレームワーク。
例えば、3C分析とは以下のような3つの視点です。一般的には3つそれぞれをバラバラに分析することがありますが、基本的に市場・顧客、競合の動向などに対して、自社が対応できているか否かを分析した方が打つべき戦略を導きやすくなります。
次に、その分析をもとに、ポジショニングの設定をします。「STP」とは、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの頭文字で、以下のように特定の市場セグメントで差別化を図るための分析です。
そして、全体戦略の策定から最下部のいわゆる機能別戦略を具体的に策定していきますが、WEBマーケティングの施策は、基本的に狭義の「マーケティング戦略」の中に入るものが多いです。
SEO対策、WEB広告、SNS、ホームページ戦略などは、基本的に「販売」活動にあたります。
ただし、そこから得られたデータはPDCAのところで役立てられます。次の一手を打つ際、改めて行われる環境分析のところにそのデータが活かされます。
この全体のフローの中で、最も重要なことは、STP分析後の「差別化」です。
この差別化の度合いがゆるかったり、市場に刺さらないものであった場合、その下の機能別戦略が全て無駄になります。
PDCAでの分析も、薄くて特徴のないデータや情報を時間をかけて分析することになり、非常に効率が悪くなります。
最終的にマーケティングの目的であるブランドの構築も果たすことができないでしょう。
統合的なWEBマーケティング施策が重要
統合的なWEBマーケティング施策(トータルWEBマーケティング)が重要となる理由は、それぞれの施策が単独で動くのではなく、互いに連携し合うことで相乗効果を生み出すからです。
例えば、SEOのコンテンツ記事で集客したユーザーをその記事の内容で育成し、WEB広告のリターゲティングで追いかけ、最終的にメールマーケティングで購買に繋げるといったように、複数のチャネルを組み合わせて活用することで、より効率的に成果を上げることができます。
この逆は、それぞれがバラバラな施策を実行することです。
SEOではこの路線で、広告はこの路線で、SNSはこの路線、ホームページはこの路線・・・など、社内の担当者が別々だったり、委託している会社が別々だった場合、全く違う方向を向いて施策をしている会社は少なくありません。
全てを統括できるマネージャー、ディレクターが自社もしくはコンサル会社などの委託先にいないと施策がバラバラになります。
テレビなどのマス媒体で多額の広告費を使える予算がない会社の場合、「△△△△といえばこの会社」というブランドイメージを構築するためには、さまざまな施策が一定の方向を向いている必要があります。
限られたリソースを一定の方向に向けて集中投下し、それがあるセグメントで区切られたマーケットである場合、そのマーケット内にいる人にとっては、WEB上でそのブランド名が頻繁に出てきて、同じような訴求を何度も見ることになります。
これがブランド想起に繋がり、いつか購入され売上が増えることになります。
したがって、①統合的なWEBマーケティング施策を、②特定のマーケットに、③頻繁に投下する、ということになり、次に説明するランチェスター経営戦略に近い考え方になります。
WEB上の戦いはランチェスター経営戦略に近い
ランチェスター経営戦略とは、第一次世界大戦中にフレデリック・ランチェスターが提唱した「ランチェスターの法則」をベースにした経営理論です。
ランチェスターの法則とは
ランチェスターの法則は、は戦争における戦闘員の減少度合いを数理モデルにもとづいて記述した法則で、以下のように第一、第二の法則に分かれています。
第一法則(剣や弓矢による接近戦の法則)
戦闘力は「個々人の武器の性能に比例」する(小規模戦では一対一の力勝負)。
第二法則(遠隔戦の法則)
戦闘力は「武器の性能と兵力数の2乗に比例」する(遠隔の大規模戦では人数が多い側が有利)。
ランチェスター経営戦略
ランチェスター経営戦略とは、この理論をビジネスに置き換えて、自社と競合他社の力関係を「兵力数=経営資源」と「武器効率=商材の独自性」として分析します。
一般的には、以下のように捉えられることが多いでしょう。
第一法則:市場セグメントを限定して独自性で勝負、大手が参入していないエリアに限定した局地戦など
第二法則:大きな市場に大量の広告を投下、広いエリアに営業マンを大量投下など
WEBマーケティングにおけるランチェスター経営戦略
ランチェスター戦略で言うところの「武器効率=商材の独自性」は、全てのユーザーに対してその力を発揮する必要はないのですが、特定の市場セグメント(一定数の消費者層)において、競合会社との戦いに勝ち残る力を持っていなければなりません。
競合会社に勝てる力がないのであれば、その後の全ての施策が無駄になります。
勝てる力があるのであれば、SEOのコンテンツマーケティング、広告、SNS、ホームページ戦略などのWEB上のマーケティング施策にリソースを投下していきます。
第二法則は、一般的には「市場全体をカバーする」ことを目的として大企業が用いるべき戦略と言われていますが、WEBマーケティングが浸透している現代では、何も考えずに「市場全体」を攻めても非効率なマーケティングになります。
WEBマーケティングでは、テレビや新聞などのマス広告と違い、ターゲットを絞って認知を高めていくことができるからです。
実際、テレビや新聞などのマス広告よりもWEB上の広告費の方が上回るようになってきています。
したがって、WEBマーケティングの世界では、大企業でなくても、特定の市場セグメントに対してはリソースを大量投下することができるのです。
このとき、前述のように「統合的なWEBマーケティング施策(トータルWEBマーケティング)」ができていた方が効果が高まります。
現代の「新訳ランチェスター経営戦略」
「WEBマーケティング時代のランチェスター経営戦略」とは、以下のようになるでしょう。
第一法則:特定の市場セグメント(商品カテゴリー)内で「武器効率=商材の独自性」を高める。
第二法則:特定の市場セグメント(商品カテゴリー)内で、「商材の独自性」を活かしたSEO、広告、SNS、ホームページ戦略などのWEBマーケティング施策を統合的に集中投下する。
第三法則:第一、第二法則のセットを他の市場セグメント(商品カテゴリー)で実施していく。
特定の市場セグメントは勝負しやすいものの、市場規模が大きいとは限らず、売上がすぐに頭打ちになる可能性が高いです。
そのため第三法則として付け加えたように、売上を拡大していくためには、複数の市場を第一、第二法則のセットで攻めることが求められます。
そのとき、既存の社内のリソースで戦えるのか、あるいはお金をかけてリソースを増強していくのか、という選択肢があります。
そこで必要な考え方が、次に示すアンゾフの成長マトリクスです。
成長戦略は「アンゾフの成長マトリクス」に近い
アンゾフの成長マトリクスは、企業の成長戦略を「市場」と「製品」の2つの軸で4つのパターンに分類するフレームワークです。
既存市場に既存製品を投入する「市場浸透」、新規市場に既存製品を投入する「市場開拓」、既存市場に新製品を投入する「製品開発」、新規市場に新製品を投入する「多角化」があります。
このマトリクスを活用することで、自社がどの戦略を取るべきか、WEBマーケティングでどのようなアプローチをすべきかを明確にできます。
「新訳アンゾフの成長マトリクス」とは
しかし、実務の面ではこの理論は少し使いにくいというのが実情です。
これまでのコンサルティングの経験上、以下のような「新訳アンゾフの成長マトリクス」として考えるとスムーズです。
「市場」カテゴリは、「既存市場」「新市場」に分類されていますが、その間に「潜在市場」という分類を置くとマーケティング施策がしやすくなります。
また、「製品」カテゴリは、「既存製品」「新製品」に分類されていますが、その間に「既存製品の製品ライン拡張・高付加価値化等」という分類を置きます。
企業が「新市場」や「新製品」に進出するには、組織や生産体制を大きく変える必要があり、上記の図で①から⑤のいずれかから⑥に移行するところで、非常に多くのコストが必要になります。
そのため、⑥に移行する前に、既存のリソースで新しい売上をつくることにチャレンジすべきという考え方です。
この、既存のリソースで潜在市場(既存市場に近い未開拓市場)を開拓していくのは、SEO対策、広告、SNS、ホームページを工夫することによって実施でき、実際にこの方式で売上アップを実現した例があります。
特にSEO対策では不可欠の概念で、検索ボリュームだけで対策するよりも効果があります。
なお、上記の図で、新市場に「キーワード」とありますが、これはSEO対策、広告運用、そしてホームページ上で、新市場としてターゲットにするセグメントが反応するキーワードです。
業界の特性・今後のトレンドを把握する
業界の特性や今後のトレンドを把握することは、WEBマーケティングを成功させる上で不可欠です。
例えば、日本では人口減少で多くのマーケットが縮小していくため、今まで通りにマーケティングを行っていても、マーケットの規模縮小に比例して自社の売上が減っていくのです。
自社が属する市場が縮小傾向
もし、自社が属するマーケットが縮小していく場合、前述の「新訳アンゾフの成長マトリクス」で述べたように、「同じリソースで少し違うマーケットから売上を増やす」ということが出来ないと、売上が減るということです。
「SEOの順位は上がって、コンバージョン率も改善されているのに売上が増えない」という現象が起きている場合、これに該当している可能性があります。
自社が属する市場が拡大傾向
一方、急激に市場規模が伸びている業界の場合、市場規模の伸びと自社の売上の伸びを比較する必要があります。
売上が仮に伸びていたとしても、市場の伸び率よりも自社の売上の伸び率が低い場合、マーケティング施策に問題がある可能性があります。
その場合は、早めにマーケティング施策の見直しをした方が良いでしょう。
早めに見直した方が良い理由は、市場の伸びよりも売上の伸びが大きい競合会社がいた場合、その競合会社が他社よりも稼いだ利益でどんどん商品やサービスに投資をしてくると、マーケティング施策の改善だけでは太刀打ちできなくなる可能性があるからです。
マーケティング施策の費用対効果の分析も必要
もしくは、市場の伸び率よりも自社の売上の伸び率が高い場合でも、マーケティング施策の費用対効果はしっかりモニタリングする必要があります。
例えば、市場が伸びていると広告をかければどんどん問合せが入るので、あまり効率性を考えずにコストの高い方法で広告運用を続けてしまっているケースがあります。
もし、競合他社がもっと効率的な方法でコストを抑えて問合せを獲得している場合、数年後には獲得している粗利に大きな差が出てきます。
そして、短期的には気が付かず、数年後に粗利で差を付けている競合会社が大きな投資をしてきた瞬間に、突然苦戦を強いられることになります。
そのため、いわゆるPEST分析や、市場の伸び率と自社の売上の伸び率の分析は実施しておいたほうが良く、今後予想されているトレンドも把握しておくことが重要です。
「差別化」とそれを活かすマーケティング戦略に必要な知識
マーケティングを正しい方向で進めるためには、基本的な理論やフレームワークへの理解も欠かせません。
これらを知らずに闇雲に施策を行うと、効果的な戦略を描けず迷走してしまう恐れがあります。
特に、前半の方で記述しているブランド構築のためには、「他社との差別化」が重要で、どのようにして差別化を図るかを知っておいた方が良いでしょう。
よくあるのは、自社の魅力が何かわかっていないケースです。
お客様が何を評価して購入しているのか、あるいは何が評価されなくて購入されていないのかが認識できていないということです。
当社がご相談を受ける企業においても、ホームページやLP、広告などで何を訴求すべきかをヒアリングしても答えがないケースは非常に多いです。
ここでは、Orbit Managementがクライアントのコンサルティングを行う上で、意識している理論をご紹介します。
ジョハリの窓
ジョハリの窓とは、自己と他者から見た自己像を4つの窓に分類し、自己理解を深めるための心理学モデルです。
WEBマーケティングにおいては、自社や自社の商品・サービスを客観的に見つめ直すツールとして活用できます。
顧客が自社をどのように見ているのか(盲点の窓)を理解することで、これまで気づかなかった課題や強みを発見し、より効果的なコミュニケーション戦略を練ることができます。
ジョハリの窓は、具体的には以下の4つの窓です。
「開放の窓」:自分も他人も知っている
「盲点の窓」:他人は知っているが、自分は知らない
「秘密の窓」:他人は知らないが、自分は知っている
「未知の窓」:自分も他人も知らない
WEBマーケティングの「ジョハリの窓」の活用方法
マーケティングにおいては、①の「自分が知っている、他人が知っている」ところも疑う必要があります。
ユーザーが認識している自社の魅力と、自社が認識している魅力が食い違っているケースは多いです。
したがって、WEBマーケティングの現場では、ジョハリの窓のそれぞれを以下のように検討していくことになります。
「開放の窓」:消費者が考える自社の魅力と自社が考える自社の魅力が正しいか
「盲点の窓」:自社が気がついてない消費者からの魅力は何なのか
「秘密の窓」:消費者の関心を喚起する言葉は何か(何のキーワードで訴求するか)
「未知の窓」:他社がやっていて、自社がやっていない分野がないか(自社も取り入れれば売れるものはないか)
分析作業の注意点
前述の分析・検討を行うに当たって、具体的には以下のような形で明らかにしていくことになるでしょう。
お客様からのアンケート、ヒアリングから明らかにする
競合会社と比較して何が強くて何が弱いのかを明らかにする
自社のアクセスデータや問合せ内容から、消費者の関心が高いものを明らかにする
WEBマーケティングの分析を行う場合、3つ目の自社のデータのみを分析することがありますが、これだけでは不十分です。
何故ならば、差別化戦略が全く出来ておらず、広告などの訴求の軸が一定ではなく、ホームページの動線の工夫や改善もしていないという状況で、自社データのみをいくら分析しても統計データとしてはあまり役に立たないからです。
そのため、他社分析を行わずに、時間をかけてアクセス数やクリック率などのデータ、ヒートマップなどの解析を行うのは無駄な作業になることが多いでしょう。
3C分析と戦略策定
3C分析とは、戦略作成プロセスのところでも記載しましたが、市場環境を「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の三つの視点から整理するフレームワークです。
顧客ニーズや市場動向を起点に、競合との差別化要因を把握し、自社の強みを活かした戦略を導き出すのが目的です。
3C分析の施策決定マトリクス
3C分析にはいろいろな活用方法がありますが、Orbit Managementでは、自社を軸に2つのマトリクスを作成し、自社と競合、自社と顧客との関係をそれぞれ分けて施策を検討します。
前述のジョハリの窓と3C分析を合体させたような考え方で、これを「3C分析の施策決定マトリクス」と呼んでいます。
これを行う理由は、3C分析をバラバラに行っても、定性的な客観的事実が出てくるだけで、そこから何を導きだすかが見えにくいためです。
定性的な客観的事実よりも、「相対的な」立ち位置を明らかにし、「市場や競合との関係」の中から次の戦略を導き出すべきでしょう。
クロスSWOT分析との違い
上記の3C分析施策決定マトリクスは、クロスSWOT分析に近い方法ですが、クロスSWOT分析は、競合や消費者の存在が抽象的になりがちです。
テレビや新聞などのマス広告の時代はそれでも良かったかもしれませんが、WEBマーケティングは「特定の市場セグメント」で「特定の競合に対して差別化」していかないと勝てません。
そのため、この3C分析の切り口の方がより具体的な施策を導き出しやすいと言えます。
イノベーションの普及理論
イノベーションの普及理論は、E.M.ロジャーズが1962年に提唱したもので、ある新しい技術やアイデアが、社会にどのように広まっていくかを説明するものです。
イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードという5つの層に分けられます。
この研究はあくまでも新しい技術やアイデアに対するものですが、商材(商品・サービス)に対しても当てはめて考えることができます。
何故なら、ほとんどの商材は従来のものに新しい付加価値や独自の訴求を加えて販売されているため、ある意味で新しい技術やアイデアとも捉えられるためです。
イノベーションの普及理論における消費者層の特徴
このイノベーションの普及理論で分類されているそれぞれの層には、異なる特徴や行動傾向があります。具体的に見ていきましょう。
イノベーター
特徴:新しいもの好き。リスクを恐れずに試す冒険的層。
行動傾向:自ら情報を集め、最先端の商品やサービスをいち早く体験。
役割:新しいものを世の中に最初に持ち込む「火付け役」。
アーリー・アダプター
特徴:流行に敏感で、社会的影響力が大きい。オピニオンリーダー。
行動傾向:リスクをある程度許容しつつ、実用性や価値を見極めて採用。
役割:周囲に影響を与え、イノベーションを広める「伝導者」。
アーリー・マジョリティ
特徴:慎重派。多くの事例や成功例を確認してから導入する。
行動傾向:新しいものには興味があるが、リスクは避けたい。
役割:この層に普及すると、市場において「主流化」する。
レイト・マジョリティ
特徴:懐疑的。社会全体での普及が進んでから、しぶしぶ採用。
行動傾向:コスト低下や利用事例の増加など、安心できる条件が揃ってから動く。
役割:イノベーションを「完全に大衆化」させる。
ラガード
特徴:伝統を重視し、新しいものに最も抵抗する。
行動傾向:周囲が完全に移行してから、やむなく導入する。
役割:普及の最後を担う。時には導入しない場合もある。
イノベーションの普及理論とWEBマーケティング
これらの層はそれぞれ特性が異なるため、WEBマーケティングにおいては、自社の商品やサービスがどの段階にあるかを把握し、それぞれの層に合わせたコミュニケーション戦略を立てることが重要です。
ただし、5つの層に対して細かく対応するというよりは、次に示すキャズム前、キャズム後という段階に分けたほうがシンプルです。
なお、「ラガード」に関しては、多くの場合は無視して考えることになります。
キャズムとは
キャズムは、ジェフリー・ムーアが1991年に提唱した概念で、上記のアーリー・アダプターとアーリー・マジョリティとの間には大きな溝(キャズム)があるということで、具体的には以下のように示しました。
アーリーアダプター:新しい技術やコンセプトに価値を感じて採用する。リスク許容度が高い。
アーリーマジョリティ:実用性や信頼性を重視。多数派が使っている安心感がないと採用しない。
キャズムの前と後では顧客が真逆の思想をもっており、同じようにマーケティングを行うと失敗するとされています。
キャズム前の顧客に対しては、共感など情緒的で感性に訴求するマーケティングが求められ、キャズム以降の顧客に対しては、実用性や第三者からのプラスの評価などの理性への訴求が商材やマーケティングに求められます。
実際の現場では、ホームページやLP(ランディングページ)をつくる際に、感性に訴求するか、それとも理性に訴求するか?という議論になるときがあります。
このイノベーションの普及理論を応用すると、商材を多くのマーケットに浸透させ売上を増やしていくためには、両方必要だということになります。
また、どちらへの訴求も完璧に出来た上で、それでも市場に浸透しない(売上が増えない)場合は、その商材自体がマーケットに受け入れられないか、訴求の切り口が間違っていたということになるでしょう。
ブランド・エクイティ・ピラミッド
ブランド・エクイティ・ピラミッドとは、ケビン・レイン・ケラーが提唱したもので、ブランドが顧客の心の中に築き上げる価値を、階層的に示したモデルです。
ブランド・エクイティ・ピラミッドとは
以下の図に示すように、ブランド・エクイティ・ピラミッドの一番下の階層は「知覚」で、顧客がブランドを認知している状態です。
そこから「意味付け」、「反応」、「関係性」と進むにつれて、顧客との結びつきが深まります。
このピラミッドを意識することで、自社のブランドがどの段階にあるかを把握し、次のステップに進むための施策を計画できます。
ピラミッドの底辺:セイリエンス
まずは、ブランドを知ってもらうこと、認知度を高めることが必要です。
セイリエンスは単なる「目立つこと」ではなく、顧客の頭の中に「いつ、どのようなときに思い出されるか」という、ブランドの存在感と想起の質を意味します。
「炭酸飲料が欲しいときにコカ・コーラを想起」、「寒い夜にクノールのスープ想起」のように、顧客が何か課題を感じるシチュエーションや何らかのニーズがあるときにそのブランドを連想させられるか、ということです。
顧客の頭の中に、いかにそのブランドが深く、そして広く定着しているかを表す概念です。
大企業の場合は、テレビCMなどのマス広告がメインになるでしょう。
マス媒体にマーケティング費用を投下できない場合は、SEO対策、広告、SNSのほか、プレスリリースなどを活用して知ってもらうことが求められます。
一方で、消費者の「想起集合(買う候補リスト)」に入ることが目標でもあるため、覚えやすいブランド名、ロゴであることも求められます。
ピラミッドの意味づけ・反応の左側:パフォーマンス・ジャッジメンド
ブランドが認知された後、顧客は「このブランドは何ができるのか」「どんな気分にさせてくれるのか」という機能的価値と情緒的価値を評価します。
この段階では、製品やサービスの品質、デザイン、そして顧客体験全体を通じて、ブランドの約束を具体的に示します。
ピラミッドの左側は、そのブランドに対する「品質が良い」「信頼できる」「優れている」といった理性面の評価を得るための訴求になります。
ケビン・レイン・ケラーは、以下の5つの要素を挙げています。
- 主要な成分とそれを補う特徴
- 製品の信頼性、耐久性、サービス性
- サービスの効果、効率、サービスとの共感
- スタイルとデザイン
- 価格
しかし、これらの項目に従って自社の商品・サービスの内容を書き出したとしても、あまり意味がないかもしれません。
強いブランドを構築するには、それぞれが、もしくはいずれかが「圧倒的」と形容されるものであることが求められると思います。
本ページで「差別化が重要」であることをいくつかのパラグラフで言及しているとおり、あくまでも、上記の1〜5の内容が競合他社に対して優位性を持っている必要があります。
WEBマーケティングで、ある程度肉付けしたり、際立たせて訴求することはできますが、商材自体に圧倒的な差がつけられているとマーケティングの成果は厳しくなります。
逆に言えば、商材で圧倒的な差を付けたうえで、優れたWEBマーケティング施策を行うと確実に売上を増やすことができます。
売上を何倍にもするケースでは、「商材の力」✕「WEBマーケティングの力」が大きくなっています。
ピラミッドの意味づけ・反応の右側:イメージ・フィーリング
ピラミッドの右側は、そのブランドを利用することによる「楽しさ」「安心感」「自尊心」など感情的なつながりへの訴求とその評価になります。
ケビン・レイン・ケラーは、ブランドイメージのところで、以下の4つの要素をあげています。
ブランドの使用者のプロフィール(どんな人か)
購買状況と使用状況(シチュエーション・時点)
パーソナリティと価値(モダン、誠実など)
歴史、伝統、経験
ここでは、いろいろな切り口を通じて顧客の感情や気分に働きかけますが、一言で表現すると「何らかの一貫した世界観」と言えます。
企業は、あらゆる市場セグメントを支配することができません。中小企業であれば、尚のことターゲットのセグメントを小さくする必要があります。
そうしたときに、限られたリソースでいろんな面を見せすぎると、どれもが薄くなり、このブランド・エクイティ・ピラミッドの底辺のセイリエンス「突出性」が失われます。
そうすると、どの場面でも想起されないという事態に陥ります。
ブランドの哲学、開発者の想い、こだわり、理想などを、あらゆる切り口で表現していく。それが、ブランドの「歴史・伝統・経験」「パーソナリティと価値」をつくり、共感する人が購入して「使用者のプロフィール」「購買状況・使用状況」となっていくのです。
実際に、WEBマーケティングを行ってうまくいくのは、クライアントの「哲学、想い、こだわり、理想」などがはっきりしているケースであり、苦戦するのはその逆です。
そのため、WEBマーケティングというのは、SEO、広告、SNSだけを形だけやっていてもうまくいかないことがほとんどです。
このブランドのパラグラフに出てくるような、商材の差別化、ブランドの世界観をうまく見せていく、ということまで遡って改善していかないと、売上が増えません。
コンサルティング会社に委託している場合は、この上流工程の改善も含めて支援してもらわないと、成功する確率が高まらないでしょう。
ピラミッドの上部:レゾナンス
この段階では、ブランド認知度を高め、感性と理性への訴求が成功し、ブランド・ロイヤルティや愛着が醸成され、以下のようにリピート購入や他者への紹介といった行動を掻き立てる状態になります。
強い愛着(ロイヤルティ): 競合他社に乗り換える可能性が低くなり、継続的に購入するようになります。
熱心な推奨(アドボカシー): 自ら積極的にSNSや口コミでブランドの良さを広めてくれます。
積極的な関与(エンゲージメント): ブランドのイベントに参加したり、コミュニティで活動したりします。
顧客がレゾナンスの段階に至るためには、機能的価値(商品の品質や利便性)と情緒的価値(ブランドの世界観やストーリー)が十分に満たされていて、「ブランドの約束」が守られ、「予想以上の体験を継続的に得られる」という期待が醸成される必要があります。
ブランド・エクイティ・ピラミッドを活用したWEBマーケティング戦略
この理論を応用したマーケティング戦略は、イノベーションの普及理論と似ているところがあります。
イノベーションの普及理論とブランド・エクイティ・ピラミッドのいずれも、感性/理性の両方への訴求が必要だとしています。
双方の理論に対するWEBマーケティング施策をまとめると、以下のようになり、いずれも、ホームページ、LP、広告、SEO記事、SNS、動画などを活用した施策になります。
キャズム前
未来のビジョンや開発ストーリーを語る
(圧倒的な)商材の機能・性能・便益をしっかりと訴求する
価格優位性があれば価格も訴求の対象にする(ない場合は前面に出さない)
スタイル・デザインを訴求する
ブランド利用者の特徴・歴史や伝統(世界観)の訴求
インフルエンサーとの協業
キャズム後(HP,SNSでの訴求)
顧客の声・導入事例・成功事例・ケーススタディを紹介
体験の機会の提供
「〇〇の使い方」「〇〇を徹底解説」などのコンテンツ(記事・動画)を制作
メディア掲載・受賞歴・第三者の評価の紹介
既存顧客に対するご紹介キャンペーン
WEBマーケティングのツール
WEBマーケティングを効率的かつ効果的に行うためには、各種ツールの活用が欠かせません。
以下に、主要な目的別に代表的なツールを紹介します。
アクセス解析ツール
アクセス解析ツールは、ウェブサイトに訪れるユーザーの行動を分析し、サイト改善のためのヒントを得るためのものです。
訪問者数、ページビュー数、滞在時間、離脱率など、様々なデータを収集・分析することで、サイトの課題を特定できます。
Google アナリティクス
Google アナリティクスは、ウェブサイトのアクセス状況を詳細に分析できる、Googleが提供する無料のツールです。
リアルタイムのアクセス状況、ユーザーの属性、流入元、コンバージョン率など、多岐にわたるデータを取得できます。
ウェブサイト改善の根拠となるデータを集める上で、最も広く利用されているツールの一つです。
Google サーチコンソール
Google サーチコンソールは、Google検索におけるウェブサイトの掲載順位や、クリック数、表示回数などのデータを取得できる無料ツールです。
検索キーワードごとのパフォーマンスを把握したり、サイトの技術的な問題を特定したりすることができます。
SEO施策の効果を測定し、改善点を見つけるために不可欠なツールです。
Google Looker Studio
Google Looker Studio(旧Google データポータル)は、GoogleアナリティクスやGoogleサーチコンソールなど、複数のデータソースを統合し、視覚的に分かりやすいレポートを作成できる無料ツールです。
複雑なデータをグラフや表にまとめて、チーム内で共有したり、経営層に報告したりする際に非常に役立ちます。
Google スプレッドシート
Google スプレッドシートは、データの集計や分析、共有に便利な表計算ツールです。
APIを利用して各種ツールからデータを自動で取得したり、グラフを作成したりすることができます。
複数のデータを組み合わせて分析する場合や、カスタムレポートを作成する際に活用できます。
WEBサイト内解析ツール
WEBサイト内解析ツールは、ユーザーがウェブサイト内でどのように行動しているかを可視化するものです。
ヒートマップなどが代表的で、クリックされた場所やスクロールの深さなどを把握できます。
Microsoft Clarity(ヒートマップ)
Microsoft Clarityは、ウェブサイトのヒートマップ分析とユーザー行動の記録を無料で提供するツールです。
ユーザーがどの場所をクリックしたか、どこまでスクロールしたかなどを視覚的に表示することで、ユーザーの関心が高いエリアや、改善すべきポイントを直感的に把握できます。
ミエルカ ヒートマップ
ミエルカ ヒートマップは、ウェブサイトのユーザー行動を分析するヒートマップツールです。
クリック、スクロール、マウスの動きなどを可視化し、ユーザーがコンテンツをどのように消費しているかを詳細に分析できます。
出典:ミエルカ ヒートマップ
https://mieru-ca.com/heatmap/what-is-heatmap/
SEO分析・競合分析ツール
SEO分析・競合分析ツールは、自社のウェブサイトのSEO状況や、競合他社の施策を分析するためのものです。
キーワードの順位変動、被リンクの状況、コンテンツの評価などを調査できます。
Ahrefs
Ahrefsは、被リンク分析、キーワード調査、競合サイト分析など、SEO施策に不可欠な機能を提供する有料ツールです。
自社のサイトにどのくらいの被リンクがあるか、どのようなキーワードで上位表示されているかなどを詳細に分析できます。
出典:Ahrefs
SEMrush
SEMrushは、SEO、リスティング広告、コンテンツマーケティングなど、幅広いデジタルマーケティング施策をサポートする多機能ツールです。
競合サイトのキーワード戦略や広告出稿状況を把握したり、自社のコンテンツ改善のヒントを得たりすることができます。
出典:SEMrush
広告分析ツール
広告分析ツールは、WEB広告の効果を測定し、広告費用対効果(ROAS)を最大化するためのものです。
クリック数、コンバージョン数、CPA(顧客獲得単価)などを詳細に分析できます。
アドエビス(AD EBiS)
アドエビス(AD EBiS)は、様々な広告媒体のデータを統合し、広告効果を正確に測定するマーケティング効果測定ツールです。
どの広告が最終的なコンバージョンに貢献したかを可視化し、広告予算の最適配分を可能にします。
出典:アドエビス
Shirofune(シロフネ)
Shirofune(シロフネ)は、リスティング広告の運用を自動化・効率化するツールです。
キーワードの追加や入札単価の調整、広告文の最適化などを自動で行うことで、広告運用担当者の負担を軽減し、広告効果を向上させます。
出典:Shirofune
見込み客管理(MA)ツール
見込み客管理(MA)ツールは、リード(見込み客)の獲得から育成、そして顧客化までの一連のプロセスを自動化・効率化するためのものです。
BowNow
BowNowは、シンプルで使いやすい国産のMAツールです。
ウェブサイトに訪れた匿名ユーザーの行動を可視化し、見込み客へと育成するための施策を自動化できます。
特にBtoB企業の見込み客管理に強みがあります。
出典:BowNow
HubSpot
HubSpotは、MA(マーケティングオートメーション)、SFA(営業支援)、CRM(顧客関係管理)など、幅広い機能を統合したツールです。
見込み客の管理から、メールマーケティング、SNS管理、顧客サポートまで、マーケティングとセールス活動を一元管理できます。
出典:HubSpot
WEBマーケティングの注意点
WEBマーケティングを進める上では、いくつか気を付けておきたいポイントがあります。
以下に、ありがちな失敗要因や注意点を挙げます。
衛生・非衛生理論
衛生・非衛生理論は、経営学者のフレデリック・ハーズバーグが提唱した、人間のモチベーションに関する理論です。
この理論では、不満を解消する要因(衛生要因)と、満足度を高める要因(動機付け要因)は別物とされています。
WEBマーケティングにおいては、衛生要因はサイトの使いやすさや読み込み速度、非衛生要因はコンテンツの質やブランドの魅力に例えられます。
どちらか一方だけでなく、両方を追求することが重要です。
自社マーケティング担当の力量
WEBマーケティングを成功させる上で、自社マーケティング担当者の力量は非常に重要です。
最新のトレンドを学び続ける向上心、データ分析能力、そして施策を実行する推進力が求められます。
担当者のスキル不足は、施策の迷走や成果の低下に直結するため、継続的な学習とスキルアップの機会を提供することが不可欠です。
WEBマーケティングコンサルティング会社の当たり外れ
外部のコンサルティング会社に依頼する場合、その会社が本当に自社の課題を理解し、適切なソリューションを提供できるかを見極めることが重要です。
WEBマーケティングとは、以下の赤枠の部分にしか関わらず、経営戦略や事業戦略、新製品プロジェクトなどの一部の工程に過ぎません。
したがって、SEO対策だけ、コンテンツの制作だけ、WEB広告の運用だけ、ホームページの修正だけ、など、末端のWEBマーケティング施策だけを一生懸命行っていても、他が間違っているとうまくいかないのです。
そのためコンサルタント会社は、アクセスデータや販売実績、他社の動向などから、STPのポジショニング、全体戦略のプラン、狭義のマーケティングの4P戦略にまで示唆出しができることが望ましいでしょう。
特に重要なのは、市場ニーズのくみ取り、競合他社との差別化です。
これらを自社で行うか、あるいはコンサルティング会社と一緒に行うか、どちらかの方法でこの2つをしっかりと実行・実現していくことが、マーケティングの必要になります。
「誰に、何を、どのように」では失敗する
WEBマーケティングを始める際に、「誰に、何を、どのように」などのようなフレームワークで考えることがあります。
「誰に」市場セグメントやターゲットに、「何を」は商品・サービス、ブランド・エクイティ、「どのように」は流通方法やブランドアセットの訴求などが対応しており、この3つの要素を埋めると、自ずとマーケティングが成立する形になっています。
しかし、このアプローチだけでは失敗する可能性が高いです。
なぜなら、このページで何度も記載しているとおり、WEBマーケティング、マーケティングにおいては、他社との差別化が上手にできていないとあらゆる施策がうまく進められないのですが、このフレームワークではその視点が欠けているためです。
「誰に、何を、どのように」は、埋めようと思えばいくらでも埋められますが、エッジが効いているかをしっかり確認しましょう。
作れば売れる時代であればこれでも問題なかったと思いますが、現代のようなマーケティング戦国時代では、「誰に、どんな感動を与える?、どうやって?」くらいのフレームワークで考えた方が良いでしょう。
外注か内製化か
外注か、内製化で悩む企業は多いと思いますが、基本的に外注をおすすめします。
理由は、WEBマーケティング業界のトレンドの変化は激しく、自社のデータだけを見ていても業界全体のトレンドや動向がわからず、結局専門家に相談しないと打破できない状況に陥るためです。
せっかく採用コストや教育コストの投資をして、毎月の人件費を払っているのに、有効な戦略を打ち出せるとは限りません。
外部のコンサルタントと、持っているノウハウと委託費用を考えると、外注した方が費用対効果は高いでしょう。
ある程度の規模の企業の場合、外部のコンサルタントなどの専門家に戦略の上流工程を相談し、具体的な施策の部分を内製化するのは問題ありません。
WEBマーケティングコンサルティング会社の選び方
WEBマーケティングを成功させるためには、自社に最適なコンサルティング会社を選ぶことが非常に重要です。
一般的には、WEBマーケティングといってもSEO対策、広告運用、SNS広告運用、サイト制作会社に分かれています。
まずは、自社の課題と合致しているかを確認します。
それぞれバラバラに委託する場合、WEB戦略の整合性、一貫性が失われるため、注意が必要です。
全体の統合的なマーケティングを希望される場合は、トータルでWEBマーケティングを行っている会社に相談しましょう。
次に、実績や成功事例を具体的に確認し、自社と類似した業界や課題を解決した経験があるかを見ます。
SEOや広告の「施策はできる」けれども、「クライアントの売上を増やす」ことができているかどうかは別問題です。
実績は、「何社行っているか」ではなく、「売上を◯倍にした事例が何社あるか」という視点で確認することをおすすめします。
もし、WEBマーケティングに専門的に取り組みたいと考えているものの、社内に十分なリソースがない、あるいは外部のコンサルティング会社に依頼してもうまくいかないといったお悩みがある場合は、Orbit Management にご相談ください。
Orbit Managementは、経営コンサルティングの知見を持つ専門家が、WEBマーケティング施策の運用や代行だけでなく、経営課題を起点とした上流工程からの戦略立案をサポートします。
ウェブサイトへの集客だけでなく、売上アップ、事業成長への貢献、中長期的なブランド構築を強みとしています。
SEOで成功するために
Googleのアルゴリズムは、ユーザーに役立つコンテンツを上位にするように年々進化しています。
そのため、近年のSEO対策は、ホームページのソースコードやタグを改善するなどのテクニカルな対策だけでは成功しません。
重視されているのは、コンバージョンするサイト、滞在時間が長いサイトなどであり、それを実現するために、情報の伝え方、デザインの見せ方、サイト全体で問い合わせを獲得する動線やコンテンツの仕掛け、これらの総合力が問われます。
コンバージョンするかどうかが問われますので、商品・サービスの内容や訴求方法にもテコ入れが必要になってきています。数年前のように、テクニックや裏技を駆使したSEO対策は通じなくなっており、経営戦略の上流からの改善が求められます。
従来のSEO対策でうまくいかなかったり、他のコンサルティング会社の支援を受けていてもなかなか成果に結びつかないという方は、お気軽にOrbit Managementへご相談ください。今の施策よりもベターな方法があるかどうか、アドバイスをさせていただきます。
以下のグラフは、当社コンサルティング先様のリアルタイムの自然検索アクセス推移を同期しているデータです。このような形で、重大な制約がない限りは、コンサルティング開始後3ヶ月目くらいからアクセスを増やすことができます。


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WEBマーケティングで成功するために
WEBマーケティングには、SEO対策、広告運用、SNS、ホームページ制作など様々な手法がありますが、顧客認知を高め、問い合わせを獲得し、中長期的にブランディングをしていくためには、総合的かつ一貫性のある施策でないと効果が低くなります。
例えば一般的なWEBマーケティングは、SEOによってウェブサイトへのアクセスを増やし、リターゲティング広告でそのリストに追客し、リードが獲得できた場合はEメールマーケティングなどで長期的なリレーションシップを構築するなど、各施策が次の施策へバトンを渡すような形で進められます。
そのため、バラバラの担当者に個々の戦略を実行させてはこれらを連携させることができないのです。
総合的かつ一貫性のある施策が出来ていないなど、これまでのWEBマーケティングでなかなか結果に結びつかないという方は、お気軽にOrbit Managementへご相談ください。まずは、今の施策よりもベターな方法があるかどうか、アドバイスをさせていただきます。
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